ファシアとは、体のあらゆる組織を覆い、繋ぎ、保護する薄い膜状の結合組織の総称です。筋肉、骨、内臓、血管など、全身の組織を包み、それぞれの機能をサポートしています。ファシアは、体の動きを滑らかにし、保護する役割を担っており、その異常は肩こりや腰痛などの原因となることもあります。
より詳しく説明すると、ファシアは、コラーゲンやエラスチンなどの線維質のタンパク質と水分で構成された、網目状の組織です。この網目状の構造は、テンセグリティ構造と呼ばれ、互いに引っ張り合って張力を保っており、多方向へ縮んだり伸びたりすることができます。ファシアは、すべての組織同士を分割し、かつ連結させており、体を滑らかに動かしたり、支えたりしているおかげで、私たちの身体はいろいろな動きをすることができています。
しかし、ファシアにストレスや運動不足、同一姿勢の継続、不良姿勢、怪我や手術、炎症などの負荷がかかると、伸張性や滑走性が低下し、可動域制限(動かせる範囲が狭くなる)が起こります。これによりファシアが水分不足となり、「よれ」が生じると、隣り合った組織との動きが悪くなる「癒着」が起こります。癒着を起こしたファシアには侵害受容器(痛みを感じる受容器)が集まりやすく、痛みを引き起こす原因となります。長時間のデスクワークやPC操作による肩こりや腰痛などはこれに当てはまり、筋膜性疼痛症候群(MPS)と呼ばれたりします。
ファシアに対する治療手技としては、筋膜リリースや筋膜マニュピレーション、マッスルエナジーテクニックなどがあります。